本・マンガ

角幡唯介さんの「極夜行」を読んで

極夜行

本の紹介

ノンフィクション界のトップランナーによる最高傑作。

ヤフーニュース本屋大賞ノンフィクション本大賞、大佛次郎賞、W受賞!

探検家にとっていまや、世界中どこを探しても“未知の空間”を見つけることは難しい。様々な未知の空間を追い求めて旅をしてきた角幡唯介は、この数年冬になると北極に出かけていた。そこには、極夜という暗闇に閉ざされた未知の空間があるからだ。極夜――「それは太陽が地平線の下に沈んで姿を見せない、長い、長い漆黒の夜である。そして、その漆黒の夜は場所によっては3カ月から4カ月、極端な場所では半年も続くところもある」(本文より)。彼は、そこに行って、太陽を見ない数カ月を過ごした時、自分が何を思い、どのように変化するのかを知りたかった。その行為はまだ誰も成し遂げていない”未知“の探検といってよかった。

シオラパルクという世界最北の小さな村に暮らす人々と交流し、力を貸してもらい、氷が張るとひとりで数十キロの橇を引いて探検に出た。相棒となる犬を一匹連れて。この文明の時代に、GPSを持たないと決めた探検家は、六分儀という天測により自分の位置を計る道具を用いたため、その実験や犬と自分の食料をあらかじめ数カ所に運んでおくデポ作業など、一年ずつ準備を積み上げていく必要があった。暗闇の中、ブリザードと戦い、食料が不足し、迷子になり……、アクシデントは続いた。果たして4カ月後、極夜が明けた時、彼はひとり太陽を目にして何を感じたのか。足かけ4年にわたるプロジェクトはどういう結末を迎えたのか。

出所:Amazon

心に残った言葉と考えたこと

P.43 探検というのは要するに人間社会のシステムの外側に出る活動です。昔の探検は地図の空白部を目指すのが目的で、当時の地図というのはその時代のシステムが及ぶ範囲を図示化したメディアだったわけです。でも今はもう地図の空白部なんて存在しない。じゃあこれからの探検はどういう形が考えられるのか。それで考えついたのが極夜の探検でした。

ー中略ー

とにかく極夜という存在を超えた空間状況こそ、僕らが普段暮らす現代社会システムの外側にある世界なわけで、それこそ従来の地図の空白部にかわる新しい脱システム的な探検の対象地域になると思います。

ー中略ー

真の目的はどこかに到達することではなくて極夜という特殊環境そのものを探検することです。そして極夜が明けて初めての太陽が昇った時に自分が何を感じるか。その僕の最後の感情の中にこそ、たぶん極夜という世界のすべてが表象される。

自分のメモ:自分も探検がしたい。地図の空白部に行くことや極夜地域を目指すことはできない。全人類がやったことのない冒険は難しいかもしれない。だけど、自分の生きるシステムを超える旅はできる。

P.73 探検とはシステムの外側の領域に飛び出し、未知なる混沌の中を旅する行為である以上、計画通り行かないのがいわば当たり前、計画通り行くような旅を計画できたら、それはその時、で探検ではないとさえ言える。

自分のメモ:ビジネスと冒険は同じものではないが、計画通り行きすぎたら面白くない。

P.83 GPSを使って意思決定の判断を機械にゆだねてしまうと、結果的に自分で命を管理するという土台の部分を機械の判断にゆだねることになり、何のためにこうした旅をしているのかかよくわからなくなる。

GPSを使えば確かに安全で便利にはなるし、われわれ現代人は便利で安全であることが最上の価値だと思い込んでいるが、冒険の現場においては便利さと安全性は必ずしも最上の価値ではない。どれだけ自力で行為して自分の力で命を紡ぐことができるか、冒険の意義や面白味というのは結果ではなく、そうしたプロセスの中にこそある。

自分のメモ:マニタビが提供するものも、便利で安全であることではなくて、いかに現地の人の生活を実際に自分の行為として体験をしてもらい、自分で命を紡ぐプロセスを感じてもらうこと。

ある場所に行くことが目的ではなく、プロセス(体験)から、自分の人生を生きるために必要なプロセスとは何かを考えてもらうきっかけを作ることがやりたいこと。

一方で、あくまで自分だけの冒険ではなく、お金をいただいてサービスとして提供をするので最低限の安全性や利便性は準備する必要がある。

P.213:私には、短い人生の中で35歳から40歳という期間は特別な時間だという認識があった。なぜなら体力的にも、感性的にも、経験によって培われた世界の広がりという意味においても、この年齢が最も力の発揮できる時期だからだ。

人生最大の仕事ができるはずであり、その時期にできるはずの仕事を最高なものにできなければ、その人は人生最大の仕事、さらに言えば人生の意味を掴み損ねるとそのように考えていた。だから私はその最大の仕事として極夜の探検を選んだ。

自分のメモ:自分は現在、31歳。35歳はあと4年後。35歳~40歳にかけて人生で一番の仕事ができるように今しっかり働いて、準備する。

P. 381ページ(あとがき)

人生には勝負をかけた旅をしなければならない時がある。と言っても誰かを相手にしたものではなく、自分自身を相手にしたものだ。自分を相手に勝負をかけた旅とは、要するにそれまでの過去に決着をつける旅のことである。

これはつまり、その時までに得られた思考や認識を全て注ぎ込み、それまでの自分自身を旅という形で問う行動のことだ。

ー中略ー

どこかで勝負をかけなければ、過去の自分がただいたずらに延長されて、先の読める予定調和に堕した行為を延々と繰り返すような人間になってしまうのではないか、という恐れがある。だから自分を腐らせないために、表現主体としての自分を過去から脱皮させて未来に向けて更新するために、何年かに一度は勝負をかけた旅をしなければならない。

自分のメモ:自分は今まで勝負をかけた旅をできていなかった。しかし、昨年からタイで事業をつくるというのは、人生を旅と例えるならば、初めての勝負をかけた旅となる。これは、命をかけて勝負をしていかなければならない。

と同時にこの本を読んで、自分自身も旅をしたいと思った。自分の体力、知識、経験を振り絞ってやるような旅がしたい。旅を誰かに提供することも楽しいし価値があるが、やはり自分自身が旅をしていないと、面白くて価値のある、インパクトのある体験は提供ができないと思った。

極夜行極夜行

本のご購入はこちらからどうぞ。